 |
[2004/10/21]
遺伝子ネットワーク推定システムを製品化、販売へ
|
 |
|
インフォコム株式会社(本社:東京都千代田区 代表取締役社長 沼 惇)は、東京大学と共同で開発した遺伝子ネットワーク推定システムを製品化(製品名「ASIAN:Automatic System for Inferring A Networkの略」)し、2005年1月より販売を開始いたします。
マイクロアレイ(※1)技術の進歩により、大量の遺伝子発現データから有用な情報を抽出するニーズが高まってきています。遺伝子発現解析では、遺伝子の発現量の変化をもとに類似した挙動を示す遺伝子群を分類するクラスタリング(※2)が一般的になってきました。
現在ではさらに進んだ解析の一つとして遺伝子間の相互作用ネットワークを推定することが注目されており、ゲノム創薬(※3)などへの応用が期待されています。
今回製品化する「ASIAN」は、インフォコムと東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター堀本勝久教授との共同開発によるものです。
網羅的遺伝子発現解析の手法としてマイクロアレイが頻繁に用いられますが、従来の遺伝子間のネットワーク推定を行う計算手法では計算量が非常に大きく、スーパーコンピュータで数週間以上要する場合もあります。特にヒトやマウスのような高等生物の遺伝子を解析する場合にはその遺伝子数の多さから解析が一般的に困難であるとされていました。
「ASIAN」の大きな特長は、それらの問題点をGraphical Gaussian Modeling(以下GGM(※4))をベースにしたネットワーク推定アルゴリズムを採用することによって解決し、多数の遺伝子間のネットワークをパーソナルコンピュータ上で現実的な時間内で解析するアルゴリズムを搭載している初めての製品ということです。
| ご参考: |
一般的なパソコン上でヒト43,033遺伝子、33測定点データの解析に要する計算時間は、「ASIAN」を用いると25分程度です。スーパーコンピュータを用いた従来の方法では計算量が膨大になり現実的な時間内で十分な解は得られませんでした。
|
「ASIAN」のもう一つの大きな特長は、ネットワーク推定の精度の高さです。
遺伝子発現解析でよく利用される相関係数行列では、「変数間の直接の関係により相関が見られる」場合と、「いくつかの他の変数を介した関連やある共通した変数に影響を受ける2つの変数間に見られる間接的な関係により相関が見られる」場合とを区別できません。
「ASIAN」で採用したGGMでは、偏相関係数(※5)を用い、このような直接的な相関と間接的な関係を区別できるようになっており高精度のネットワーク推定を実現しております。
「ASIAN」はデータマイニング領域でインフォコム社が提供している「OMNIVIZ®」「PathwayAssist™ 」などの既存ソリューション群を補完する役割も果たすことになり、これらと組み合わせた販売も行なってまいります。
さらに遺伝子発現解析で有用性が認められた「ASIAN」をゲノミクス(※6)、プロテオミクス(※7)分野や臨床データマイニング分野での研究の場において幅広く応用していただくために積極的な営業展開を行なってまいります。
「ASIAN」の販売につきましては、3年後には300ライセンスの販売を見込んでおります。
[稼働環境]
OS: Windows2000/XP, Linux
プロセッサ:500MHz以上、RAM 256 MB以上
■「ASIAN」画面イメージ図■
■東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター■
| |
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターは、文部省(現:文部科学省)のヒトゲノム解析計画を担う拠点として、平成3年度に東京大学医科学研究所内に設立。現在は8分野の研究室を擁するほか、スーパーコンピュータを維持し、内外の研究者にも一部を開放している。
堀本勝久教授はバイオスタティスティクス人材養成ユニットの担当。
|
※1 マイクロアレイ
ガラスや半導体などの基板の上に多種類のDNA断片や合成オリゴヌクレオチドを貼り付けた研究ツールで、DNAチップとも言います。数千から数万におよぶ遺伝子の発現を同時に測定することができます。
※2 クラスタリング
類似した性質をもつ要素をグルーピングすること。遺伝子発現解析では遺伝子の発現量に基づいて遺伝子や測定条件を分類します。
※3 ゲノム創薬
ゲノムとは生物の設計図にあたる全遺伝情報の一揃いで、ヒトの場合は約30億個の塩基対により構成されています。ゲノム創薬とはこのゲノムデータを利用して遺伝子レベルで病気の原因を調べることにより、患者個人の病態に合わせた新薬を効率よく開発すること。
※4 GGM(Graphical Gaussian Modeling)
グラフィカルモデリングは多変量解析学の一手法であり、多変量データの関連構造を表わす統計モデルをグラフによって表現する手法。GGMは共分散分析とともに多変量解析法の第二世代とも言われ、今後理論的発展とともに様々な分野での適用が期待されている。「ASIAN」で適用したGGMはグラフィカルモデリングの一手法。
※5 偏相関係数
注目する二変数以外の変数の値を固定した下での、その二変数間の相関を表します。例えば、3つの変数x1、x2、x3 があるとき、変数 x3 の値を固定した下で x1 と x2の間に関連(直接的な相関)があるかどうかを示します。GGMでは偏相関係数を用いて直接的な相関の有無を判断します。
※6 ゲノミクス
個々の遺伝子よりも全遺伝子とそれらの間の相互作用に注目して行う包括的な研究。
※7 プロテオミクス
ゲノムにコードされている全蛋白質の発現や相互作用などに関する研究。
|
|